メッセージ

ご相談事例2:共同名義銀行口座と証券口座(米国)

谷口パートナーズ国際会計・税務事務所は、投資と税務の助言が同時にできる、国内唯一の資産運用専門会計・税務事務所です。
国際的な資産運用には、海外の各種制度についての十分な知識と経験が必要ですが、さらに日本の制度との違いとその影響に関する知識が必要不可欠です。
具体的に、弊事務所にお客様から頂いた相談事例をご紹介いたします。今回の内容は米国の資産を日本に移管する際に起こった、共同名義銀行口座と証券口座(米国)に関する内容です(なお、必要に応じて実際の相談事例に変更を加えていますのでご了承ください)。

 

ご相談事例2

2013年末に、夫が長期入院しており体調面で不安があるので、米国の資産を日本に移管したいとご希望の夫人が弊事務所にご相談に来られました(後ほど、その時点で夫は実際には会話や署名が難しい状況だと知りました)。ご主人は、長年米国にお住まいで、その時に事業に成功され、一定の資産を米国にお持ちでした。現在は、ご夫婦で日本にお住まいです。
最近、ご夫人が日本の弁護士に相談したところ、米国にある資産の相続に際しては、米国裁判所の検認手続(注1)が必要で非常に煩雑であるので、今から資産を日本に移管した方が良いとアドバイスを受けたとのことです。
ご夫婦の米国での資産は、主に米国の銀行口座と証券口座に保有。銀行口座には、夫と共同名義で預金が、証券口座には米国株やファンド投資信託がありました。日本と異なり米国をはじめ海外では、複数名で1つの銀行口座(共同名義口座、ジョイント口座)(注2)を開設することができます。
米国の資産を日本に移管するため、米国の銀行口座を解約し残高を日本の銀行に全て移管するため、米国の銀行に手紙を送り、口座解約の依頼と残高の日本の銀行への振り込みを依頼しました。
しかし、振込はなされず代わりにご夫婦共同名義宛に小切手が送られてきました。さらに小切手を日本の銀行に持ち込んだものの扱ってもらえずお困りでした。

一方、夫名義の証券口座については、既に保有株式等を全て売却して日本の銀行に送金済みで、それに関連する確定申告のサポートをご希望でした。

お客様のお話をお伺いした上で、弊事務所から以下のご説明をしました。

  • 銀行口座を解約するときは小切手が振り出されるので銀行振り込みを依頼することはできない。まずは振込を依頼してから、振込後、口座解約依頼をするべき。ただし、インターネットバンキングなど、先方銀行のセキュリティ手続を経ることが必要になる。IDやパスワードが必要で、もしくは電話で依頼するのであれば、本人が英語で電話する必要がある
  • 上記が難しいようであれば、日本で換金できる小切手を振り出してもらうよう依頼する必要がある。依頼すれば、夫の名前「OR」夫人を振出先とした小切手を送ってくれるはず。その場合、日本での本人確認等のため換金手続に2~3週間かかることがある
  • 証券口座については、既に売却してしまったので売却益に対して20%の税金が日本でかかる。もし証券を日本の証券会社に移管してから売却すれば10%の軽減税率だった(ただし軽減税率は2013年末で廃止)
  • 証券会社の取引確認書によると取得価格がゼロとなっている銘柄が複数ある。これは過去に別の証券会社から移管したためなので、至急、過去の証券会社の資料を確認する必要がある。取得価額が不明のままだと売却金額の5%が取得価格とみなされてしまうので大きな税金がかかる(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1464.htm

その後、弊事務所は米国銀行と証券会社とのやり取りをサポートさせていただきました。結果として銀行口座解約に際して振り出された1億円近い小切手は、無事、日本で換金されました。また、軽減税率は適用できなかったものの、過去の証券会社との取引明細を発見することができたので、正しい取得価格で申告することができました。もし過去の取引明細がなければ発生したであろう約1千万円の追加税務負担を回避できました。節税できたわけではありませんが、余分な税金を払うことなく無事申告が完了し大変喜んで頂きました。

本件には後日談があります。申告完了後、しばらくして夫がお亡くなりになり相続が発生しましたので、弊事務所で相続税申告などの日米の相続手続をお手伝いさせていただきました。こちらについては国際相続のご相談事例として別途、ご紹介します。

 

本件における弊事務所のサービス

  • 米国銀行口座解約手続きのサポート
  • 米国株売却等に関する日本における確定申告のサポート
  • 日米での相続手続のサポート

 

注1:米国における相続の検認手続
米国における相続手続は、日本におけるものと大きく異なり、原則として、検認裁判所と呼ばれる裁判所による検認(プロベイト Probate)手続を経る必要があります。検認手続中の財産は裁判所の管理下に置かれ、原則として相続人は相続財産を自由に使うことができません。また、米国の相続手続に関しての知識や英語でのやりとりが必要になるなど、相続人にとって様々な壁が立ちはだかる可能性があります。
検認手続は、手続を行う州、遺言の有無、財産の種類や相続人の状況、各州の裁判所の判断等により様々ですが1年から3年程度の期間を要し、相当な費用負担を生じます。

注2:共同名義口座
共同名義口座(ジョイント口座 Joint Account)は、複数の名義人が1つの口座を維持・管理するシステムです。日本の銀行では共同名義ロ座は禁止されていますが海外では一般的です。
国や金融機関によりますが、夫婦や親子だけではなく、恋人や友人、愛人とでも口座を作れるところも多いです。
単独名義の場合、仮に名義人が死亡した場合、資産を回収するのに複雑な手続きを要求されますが、共同名義なら他方の名義人がそのまま全資産を引き継ぐことが可能です。
但し、相続の場合などは法的な相続手続きを経ないと共有者の自由な引き出しが制限されることもありますし、相手方に勝手に全財産を引き出されるリスクもあります。
なお、近年、海外の共同名義口座を使った相続税の申告漏れが目立っています。「相続税がかからない」という業者側の虚偽の説明を信じて口座を開いた人もおり、国税当局が注意を呼びかけています。弊事務所では、共同名義口座以外の方法で、共同名義口座のメリットを実質的に享受する方法をお薦めしています。

谷口パートナーズ国際会計・税務事務所は、お客様の資産を「守る」ことを最優先としてサービスを提供しています。弊事務所が、特定の投資商品・金融商品の購入をお客様にお薦めすることで、その販売会社・運用会社から報酬を得ることは一切しません。