金融商品取引法下における「金融商品取引業」のうち、投資助言業と、金融商品販売業(第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業)には決定的な違いがあります。
投資助言業者は、助言や紹介した金融商品の販売責任は負いませんが、金融商品販売業者は、販売した金融商品の販売責任を負います。つまり、投資助言業者の場合、投資家は直接、運営会社等から金融商品を購入することになるので、つまるところ、助言や紹介した金融商品に問題があったとしても、それは自身が販売したわけではない、紹介しただけだ、と主張することが可能です。一方で、金融商品販売業者は、販売した金融商品については、苦情処理や紛争解決について、自らが窓口を設けて対処しなければならないなど、助言業とは次元の違う責任を負います。
10月7日のコラム「いつかはゆかし」の次でも書きましたが、現在、監視委は、金融商品販売業の適正化のため、ファンドの販売などを手がける第二種金融商品取引業者の集中検査に乗り出しており、その結果は、今後、第二種金融商品取引業の登録審査に反映されます。すでに運用業の登録が非常に難しくなっているように、第二種金融商品取引業の登録審査も非常に厳しくなると予想されます。
また、そもそも、ビジネス面から考えても、投資助言業者が金融商品の販売責任を簡単に取れるとは思えません。証券会社など第一種金融商品取引業が取り扱わない海外の金融商品となると尚更です。
これまでの 投資助言業者(単独登録)の多くは、実質的には金融商品を販売しながらも、その販売責任は負わない、という状況で、ビジネスを展開していました。今回の証券取引等監視委員会の勧告により、投資助言業者には新しいビジネスモデルが必要とされるのではないかと考えます。
谷口郁夫
注)金融商品取引法に「販売」という概念はなく、正確には、「募集の取扱い又は私募の取扱い」ですが、本コラムでは便宜上、「販売」として説明します。
参考:金融商品取引法下の各種「金融商品取引業」の概要(大和総研制度調査部作成)
業種 | 主な業務内容 |
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第一種金融商品取引業 ⇒ 証券会社など |
・有価証券(みなし有価証券除く)の売買等 |
第二種金融商品取引業 ⇒ 金融先物取引業者 |
・集団投資スキーム持分等の自己募集 |
投資助言・代理業 ⇒ 投資顧問業(助言)など |
・投資顧問契約に基づく助言 |